近年、ECサイト(ネットショップ)での購買の比率がどの業界や業態でも大きくなってきています。
特に、この度の新型コロナウイルスが蔓延する中、ECサイトをすでに取り入れていた企業では「業績が落ちなかった」「反対に売上が増えた」という声も耳にします。
そういった時世も含めて、現在「ECサイトを新しく導入しよう」「すでに持っているECサイトをさらに発展させよう」と考えている方も少なくないでしょう。
とは言っても、ビジネスモデルが未完成なまま新たにECサイトを導入するには時期尚早であったり、そもそも「ECサイトをどうやって大きくすれば良いかわからない」という方も多いと思います。
また、ECサイトをすでに運用していて「決済手数料が高い」「機能に限界がある」と感じ、別のシステムに移行することを検討されてる方もいるかもしれませんね。
今回は、そういった各方のフェーズやニーズに合わせたECサイトの導入や移行について詳しく解説していきます。
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ネットショップは「ECモール」と「ショッピングカート」の2種類
ネットショップは、「ECモール」と「ショッピングカート」の2種類に大別することができます。
どちらを使用するべきかはご自身の目的によって異なります。
まずは、それぞれの概要を把握してください。
ECモールの特徴
ECモールは、Amazon(アマゾン)や楽天に代表される、言わばショッピングモールのWeb版のようなものです。
実際のショッピングモールと同じく、もしそのモールに店舗出店できれば集客の見込みは約束されていると言えます。
そのため、売上を上げるまでを低コスト・低リスクで始めやすく、受注から配送完了までを整えられた管理画面で業務を効率良く行うことができるメリットがあります。
一方で、決済手数料が高いことが大きなデメリットです。
売れれば売れるほど出費がかさみ、また数多くの出品者に埋もれてしまうため価格競争に巻き込まれやすい傾向にあります。
よって、売りたい商品のブランディングが難しいデメリットがあります。
ショッピングカートの特徴
ショッピングカートは、ASP(※)と呼ばれる「ECパッケージ」を利用して自サイトを構築していくタイプです。
例えば、STORES.jpやBASE、Shopifyといったものがその例です。
簡単にWebサイトを構築できる「WordPress」のECサイト版だと思ってください。
ショッピングカートは、全体のデザインから商品の設定までを自分で決めることができる点が非常に大きなメリットです。
玉石混淆のモール型でネットセールスを行うよりも、ショッピングカート型の方で自サイトを作る方がより良いEC展開を期待できます。
軌道に乗れば手数料も抑えることができ、顧客管理も行うことができリピート率の向上も狙えます。
逆に、初めのサイトの構築からマネタイズするまでのサプライチェーンを自らの手で構築しなければならず、特に集客に時間を要する点がデメリットだと言えます。
短期間で売上を上げたい場合や、多くのジャンルを出品して低い利益率で在庫を高回転させる場合などは、ECモールへの出店の方が良いケースもあります。
※ASP:Application Service Provider:業務アプリケーションソフトの機能をネットワークを介して利用できるサービスのこと。
ネットショップを事業化するなら「ショッピングカート」がおすすめ
モール型のECは、出品してみてどのようにECサイト運営をすれば良いかや、出荷作業などを学ぶことができます。
ただし、長期でネットショップを運営していく(事業化する)ことを考えると、ショッピングカートを導入することをおすすめします。
なぜなら、ECモールでは自社のブランディングをすることができなかったり、自分・自社の好きなようにカスタマイズができなかったりするからです。
とは言っても、どのショッピングカートシステムを選ぶべきかわからないという方は多いですよね。
それもそのはずで、集客やどう売るかも決まっていない中で、商品をWeb上に掲載しただけでは売上を簡単に作ることはできないからです。
ECサイトを運営・展開するにあたっては「フェーズ(段階)」があります。
どんなショッピングカートがあるかを紹介する前に、まずその「導入期」と「発展期」について解説します。
ネットショップ立ち上げ~運営には「導入期」と「発展期」がある
それでは、ECサイト(ネットショップ)を運営する際のステップについて解説していきます。
一般的に、ネットショップの運営は「導入期」と「発展期」に分けることができます。
導入期とは
導入期とは、まさに「とにかくやってみよう」といった段階のことで、できるだけお金はかけずに、売り方を模索する時期です。
商品すべての登録はせず、ボリュームを絞って自分たちのネットショップは市場から何を求められているのかを意識することが重要です。
- すでに制作したホームページとの棲み分けはどうするのか
- どういったターゲット層に見てもらうのか
- 商品ページをどのような仕様にするのか
などを考えながら、小さなトライ&エラーを積み重ねる時期であり、後々のネットショップの構築に関わる大事な時期です。
分析するためにデータが必要であるのと同じく、とにかく登録作業や集客、実売をしてみなければ、どんな機能が必要なのかもしくは不必要なのかはわかりません。
つまりは、叩き台を手始めに作る必要があるのです。
費用は低コストであることはもちろん、充実した導入期間を過ごすためにはある程度の機能は兼ね備えておかなければ、費用対効果は高まりません。
そして、導入のしやすさや次のシステムへの移行のしやすさも重要です。
ただ移行する際に直面する問題としては、今までの商品ページなどのURLが変更されてしまうため、それまで積み上げてきサイトのドメインパワー(GoogleやYahoo!から得ていた信頼・評価)を大きく落として再度やり直していかねばならなくなります。
今まで時間をかけて作り上げてきたため、再度リニューアルしなければならないことは非常にもったいないことです。
そのため、初めから長期的にECサイトを構築することを念頭に、どのECサービスを利用するかを無料版もしくは期間が制限された試用版を通して、何度も重ねることをおすすめします。
発展期とは
発展期は、運営しているネットショップがある程度軌道に乗り、これから大きくスケールアップさせていくための段階のことです。
そこそこの集客見込みがあり、掲載予定の商品も市場価値がすでにあることが前提です。
商品ページの内容や決済・配送方法まで方向性や整備が整っている場合は、発展期のフェーズへ進んでいると言えます。
そのため、次の段階の「カートシステム」へ移行することをおすすめします。
この発展期には「すでに使用しているカートシステムの手数料が高い」となる事例が多いです。
その目に見えるコストを気にして、別のカートシステムを探す方は少なくありません。
確かに、カートシステムの利用コストを抑えることは重要です。
しかし、手数料の安いカートシステムを利用することで、それ以上に失ってしまうことがあります。
それは、顧客管理面での機会損失です。
ECサイトの運営を続けていくと、リピート率を高めるための施策を講じたり、サイトのアクセス分析・解析を行なってデザインを更新したり、さまざまな工夫をしたりする必要が出てきます。
また在庫や顧客管理、伝票処理などが別途行うのが大変であることから、オールインワンでECサイトをまとめた方が業務効率が上がる場合があります。
そのため、多少割高になっても多機能なサービスを利用した方が全体で見た時のコストを抑えられる可能性があり、低コストのカートシステムでは機能的に不十分さを感じることにつながってしまうのです。
そこで、次の章でステージごとにおすすめのネットショップについて紹介していきましょう。
「導入期」におすすめのネットショップ
まずは、「導入期」におすすめのネットショップを紹介していきましょう。
おすすめは次の4つのカートシステムです。
- STORES.jp
- BASE
- イージーマイショップ
- カラーミーショップ
STORES.jp
画像引用元:STORES.jp
STORES.jpは、初心者でも簡単にネットショップを制作できるカートシステムです。
初期費用・月額費用が無料プランが用意されており、豊富なデザインテンプレートが使用可能でさまざまな機能・決済方法を持ち備えています。
また、ファッションコーディネートアプリ「WEAR」との連携により、WEARで登録した商品をSTORES.jpで作った自社サイトで販売することができます。
掲載する商品がファッション関連である場合はぜひとも使いたい機能です。
決済手数料はフリープランの場合5%ですが、スタンダードプラン(月額1,980円)に切り替えると決済手数料を3.6%まで引き下げることが可能となります。
反面、集客は自分ですべて行わなくてはならないことはもちろん、デザインや機能が決められた仕様しか使用できず、カスタマイズ性には欠ける点には注意が必要です。
STORES.jpは「初めはフリープランで、売れ始めたらスタンダードプランへ移行する」といったように、展開する事業に計画性を持たせて運営したい場合におすすめです。
BASE
画像引用元:BASE
STORESと同様に、BASEは初心者でも簡単にネットショップを作ることができるカートシステムです。
BASEも初期費用・月額費用がかからないプランが用意されており、機能も充実していて魅力的なサービスです。
ただ、BASEも集客は自力で行うことはもちろん、手数料が実施6.6% + 40円とかなり高めの設定になっていることがデメリットです。
そのため、商品が売れ始めた段階で移行を考える方が多いです。
ただし、「振込申請プラス」という月額980円の機能を追加すれば、申請から最短1営業日で売上金の振込ができるというメリットがあります。
また、HTMLの知識があれば、自らある程度カスタマイズすることができるため、デザイン性のあるサイトを構築することが可能です。
イージーマイショップ
画像引用元:イージーマイショップ
イージーマイショップは、2016年に東証一部へ上場している株式会社システムリサーチ社が提供しているカートシステムです。
初期費用・月額費用を無料でネットショップの開設ができます。
ただし、フリープランの容量が100MBしかないため、基本的には初期費用3,000円 + 月額費用2,700円のスタンダードプランで運営することが前提となるでしょう。
その代わり、Yahoo!ショッピングへ登録されている商品をボタン一つで登録できる機能や、売れ筋Top10・おすすめ商品のランキングを自動表示できるなど、売上アップにつながる機能を多く備えているというメリットがあります。
しかし、用意されているデザインテンプレート数は少なく、色違いが多い画一的なものが多いためデザインの拡張性には劣ります。
作れるページは無制限であるため、自分にあった機能であるかどうか手始めにフリープランで試してみると良いでしょう。
決済手数料は専用のペイメントサービス「イージーペイメント」が利用できます。
- フリープラン:5.0% + 40円
- スタンダードプラン:3.67% + 40円
が取引の都度発生します。
イージーマイショップはSTORESやBASEに比べても、売る商品があらかじめ決まっている場合におすすめです。
また、決済手数料の都度発生する40円を考慮すると、商品価格が中~高価格帯のものを取引する場合に向いています。
カラーミーショップ
画像引用元:カラーミーショップ
カラーミーショップは、国内最大導入店舗数を誇るネットショップ開業サービスです。
その利用継続率は高く、導入ユーザーの60%以上が3年以上にわたって利用し続けています。
HTMLやCSSといった言語の知識があればデザインの拡張も行うことができるため、中規模・小規模の店舗運営をするにあた、幅広い層から長期にわたって支持を得ています。
カラーミーショップのメリットは低コストの料金設定で、必要な機能が使い勝手よく利用できることです。
初期費用3,000円はどのプランでも発生しますが、月額費用は一番安い「エコノミープラン」の834円でスタートできます。
ただ、エコノミープランは200MBしかディスク容量がなく商品掲載可能数は極めて少ないため、イージーマイショップと同じく「レギュラープラン」の月額3,000円で利用することが前提でしょう。
また、初心者でも使いやすい管理画面や充実した各種機能、豊富なデザインテンプレートに加え、配送・梱包サービスとの連携、電話やメールでのサポート体制まで整っています。
「発展期」におすすめのネットショップ
ここまでは、ネットショップ「導入期」でのサービスを中心に紹介しました。
実際にネットショップで商品をどう売るのか、集客からリアル在庫との連携、受注から発送完了までを実際にやってみなければ、各商品のWeb上での市場価値はわかりませんし、費用対効果も検証できません。
そういった意味では、費用を極力抑えながら手軽に始められることは素晴らしいサービスですし、真剣にECサイトを展開していくにも対応できるサービスだと言えます。
それが、ある程度まで売れるようになると、商品や顧客のデータ管理、業務の効率化、手数料を含めたコストカットなど、あらゆることに着手していく必要が出てきます。
そうなると、強い機能を備えたサービスを改めて再検討するフェーズである「発展期」に入ります。
そういった意味でも、初めからネットショップに本気て力を入れたいと思っている方や移行を検討している方は、次の3つのカートシステムを検討してみてください。
- MakeShop
- ShopServe
- Shopify
MakeShop
画像引用元:MakeShop
MakeShopは、サービス利用流通総額実績が国内第1位とされる最大手GMOグループのGMOメイクショップ株式会社が運営するカートシステムです。
利用継続率も98%と圧倒的に高く、導入した企業の月商平均は100万円を超えます。
これだけでも、非常に強力なサービスであることは疑う余地はありません。
使用できるデザインテンプレートは非常に豊富で、HTML・CSSの知識があればさらなるオリジナルデザインの自サイトを構築できます。
サイト構築にあたっては、全面的な専任のサポーターがMakeShopではついてくれ、何か困ったことがあれば電話やメールでも相談に乗ってくれます。
決済手段は、一般的な決済は「GMOイプシロン」で十分な利率ですが、さらに「GMO PAYMENT GATEWY」を導入できれば、手数料をもう少し抑えることも可能です。
何より、MakeShopの最大の強みは「BtoBオプション」の存在で、導入の大きなメリットと言えます。
「BtoBオプション」は、初期費用が基本10,000円のところ+300,000円で付与できるオプションサービスです。
顧客を最大5グループまで分けることができ、そのグループごとに表示する単価を変更できるようになります(それ以上のグループの追加は、別途費用が発生します)。
この機能により、例えばメーカーであれば卸売りとエンドユーザーとの単価を分けることが可能になります。
商品価格を管理できるということは、顧客情報をしっかり管理できているという証です。
ただ、MakeShopの月額費用は10,000円とそこまで高くないように見えますが、実は常時SSL化をしたり最低限の容量を確保するにしてもサービス料金が分けられており、決済会社の月額ライセンス費用も含まれていません。
そのため、必要な機能を揃えようとすると月額2万円ほどはかかります。
また、WordPressで集客しようと考えている場合は、その連携にも大きな初期費用と別途月額費用が発生します。
WordPressのサーバは、別に自己保有しておかなくてはなりません。
連携後のURLの語尾には「/blog/」とついてしまうため、特に現在進行しているECサイトから移行を考えている方は、場合によっては別途費用を大きくかけることになるかもしれません。
なお、独立行政法人中小企業基盤整備機構が行っているIT導入補助金にMakeShopは毎年登録しています。
利用できる方は利用しない手はないでしょう。
ShopServe
画像引用元:ShopServe
EC業界でも老舗の株式会社Eストアーが運営するShopServeは、1999年開業から長年にかけて蓄積したデータをもとに、サイトの機能を拡充に拡充を重ねてきた、非常に高品質なECサイト開発サービスです。
初期費用は15,000円とどのプランも共通で、あとはプラン毎に月額11,400円~の費用がかかります。
決済手数料は独自のサービスを導入しており、VISA・MasterCaedの場合は3.675%と業界でもかなり安く、その他にもさまざまな決済方法があります。
また、MakeShopで紹介した「BtoBオプション」のような機能がShopServeにもあります。
ShopServeの場合10グループまで選ぶことができ、グループ毎に商品価格に対して割引率を適用でます。
別途費用もかからず、初めから搭載されている機能なのです。
また、予約販売機能やオプション機能で別途費用がかかりますが、WordPressをShopServeの入っているサーバで運用できるため、サーバーコストを削減することができます。
そのため、ShopServeは顧客管理から販売機能、サイト分析機能まで兼ね備えており、優位性がかなり高いと言えます。
ただし、用意されている機能以外は、どれだけお金をかけようともカスタマイズ不可であることが大きなデメリットです。
用意されていない機能を別途追加することができません。
カスタマイズが不要だという方もいるでしょうから、まずは無料トライアルから試してみると良いでしょう。
Shopify
画像引用元:Shopify
2004年にカナダで生まれ、2017年11月に日本法人が立ち上がった今大注目のShopifyは、世界で一番利用されているカートシステムです。
初期費用0円、月額29ドルから運用を開始することができ、プロ並のサイト構築ができる強力な無料・有料デザインテンプレートも豊富に用意されているため、比較的簡単にサイトを構築することができます。
そんなShopifyの最大の特徴は、各種アプリケーションを追加していくことで、好みの機能を追加・増強できる点です。
例えば、BtoBの卸売りなどについてもアプリケーションを追加することで、顧客ごとにグループ分けを行ったり発注の数量ごとに割引率を適用することが可能です。
WordPressの「プラグイン」に相当するものがShopifyの「アプリケーション(アプリ)」だと思ってもらうとわかりやすいかもしれません。
他にも、越境ECに強いShopifyは、多言語・他通貨に対応させることができたり、受注〜出荷業務を自動化ができたりします。
また、Shopify POS機能を使えばリアル店舗のレジ機能を手にすることができ、同時にECサイトと共有する在庫管理も可能にします。
これだけカスタマイズ性が高く、比較的安価に導入することができるShopifyは、日本語対応が増えてきたとはいえ、まだまだ英語での表記が多いことが弱点です。
アプリケーションの情報も日本語ブログはまだまだ少ない印象ですが、中国・アメリカ・イギリスに次いでEC市場が大きい日本で広がろうとしてるShopifyは間違いなくニューノーマルのカートシステムになるでしょう。
これからShopifyの情報も使い勝手も、さらに向上すると予想されます。
まとめ
おすすめのネットショップ(カートシステム)を、「導入期」と「発展期」に分けて紹介しました。
ネットショップを運営する上では、それぞれのフェーズやニーズごとに考えなくてはならないことが山ほどあります。
また、各カートシステムによって費用や実装が異なるため、シミュレーションが必要になります。
しかし、最後に紹介した「Shopify」は、すべてがそろっている環境が手軽に手に入るサービスです。
他のカートシステムの場合、初めから用意されているツールに対して、自分のやりたいことを合わせていくことが一般的ですが、Shopifyはそのやりたいことに合わせてECサイトを構築することができる、柔軟かつ未来性の高いシステムです。
商品の市場価値や売り方などを研究されて、どう展開していくかを白いキャンバスに描かれた後は、このShopifyで具現化されることをおすすめします。
Shopify Guide編集部は、メディア「Shopify Guide」の運営によってShopifyの最新情報やノウハウを常に蓄積してきています。ShopifyでECサイトの新規制作・リニューアル、Web広告などによるプロモーションをお考えの方は、こちらの問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。