
ネットショップを運営していると、不正利用やチャージバックといったトラブルは人ごとではありません。そうしたリスクを軽減する手段として注目されているのが「3Dセキュア」です。
Shopifyでは、Shopify Paymentsを使うことで3Dセキュア2.0が自動的に適用され、購入者本人の認証が強化されます。今回は、Shopifyにおける3Dセキュアの仕組みや導入方法、メリット、注意点、さらに導入後に起こり得るトラブルへの対処法まで、わかりやすく解説します。
Contents
そもそも「3Dセキュア」とは
3Dセキュア(Three-Domain Secure)とは、オンライン上でクレジットカード決済を行う際に、本人確認を強化するための認証システムのことをいいます。3Dセキュアに対応している国際的なカードブランドは、次のとおりです。
- Visa
- Mastercard
- JCB
- American Express
通常のクレジットカード決済では、カード番号や有効期限だけで決済が完了しますが、3Dセキュアを導入することで、パスワード入力やスマートフォンによる生体認証など、追加の本人確認ステップが加わります。
3Dセキュア1.0と2.0の違い
3Dセキュア1.0と2.0の違いは、次のとおりです。
項目 | 3Dセキュア1.0 | 3Dセキュア2.0 |
認証方法 | 固定パスワード | 生体認証、ワンタイムパスワード、リスクベース認証 |
対応デバイス | 主にPC向け | スマホ・アプリ決済も対応 |
ユーザー体験 | 手間がかかり離脱リスクあり | スムーズで違和感のない操作性 |
セキュリティ | パスワード流出のリスクあり | 多層的な認証で安全性が高い |
モバイル対応 | 弱い | 強い |
3Dセキュア2.0は、1.0に比べて利便性と安全性の両面で大きく進化しています。パスワード入力の手間が省かれ、スマホでもスムーズに認証が完了します。リスクの高い取引だけを対象に追加認証を行うため、ユーザー体験を損なわずに不正利用を防げる仕組みです。
オンラインショップ運営においては、より信頼できる決済環境を実現するために、2.0対応は必須といえるでしょう。
Shopifyで3Dセキュアを利用するメリット
Shopifyで3Dセキュアを利用するメリットは、次のとおりです。
- 不正利用のリスクを大幅に軽減できる
- スムーズな購入体験を損なわない
- 国際展開に対応できる基盤を整えられる
不正利用のリスクを大幅に軽減できる
3Dセキュアは、購入時に追加の本人認証を行うことで、第三者によるクレジットカードの不正利用を防ぐ仕組みです。
オンラインショッピングでは、カード情報の盗用による「なりすまし被害」が年々深刻化しており、店舗側にも大きな損害が生じかねません。
3Dセキュアを導入することで、そうした不正な決済を未然に防ぎ、より安全な取引環境が整います。
スムーズな購入体験を損なわない
最新の3Dセキュア2.0では、従来のようなパスワード入力に代わり、スマートフォンでの顔認証や指紋認証、ワンタイムパスワードなどが主流です。
これにより、購入者は煩わしい操作をすることなく、スムーズに決済を完了できるため、ストレスを感じにくい点もメリットといえます。
また、カード会社のリスクベース認証が導入されている場合、リスクが低い取引では認証自体がスキップされることもあり、違和感なく支払いが完了するケースも多いです。
国際展開に対応できる基盤を整えられる
3Dセキュアを導入することで、EUをはじめとする一部の地域で義務化されている本人認証要件(例:PSD2のSCA=強力な顧客認証)にも対応できます。
とくにヨーロッパでは、こうしたセキュリティ要件を満たしていないと、決済そのものが拒否されたり、販売が制限されたりすることも珍しくありません。
そのため、グローバルに販売したいショップにとっては、3Dセキュア対応が信頼性の証明になるだけでなく、販売機会を逃さないための重要な条件ともいえます。
Shopifyで3Dセキュアを導入する方法
Shopifyで3Dセキュアを導入する方法は、次のとおりです。
- Shopify Paymentsを有効にする
- サードパーティ製決済ゲートウェイを利用する
- Shopify Plusでのカスタム決済アプリを開発する
- アプリでは導入できない
Shopify Paymentsを有効にする
3Dセキュアを利用するには、まずShopify公式の決済サービス「Shopify Payments」を有効にする必要があります。
管理画面の「設定」から「決済」を選び、Shopify Paymentsの設定を完了すれば準備は完了です。
事業者情報や銀行口座情報を入力するだけで、日本国内のVisaやMastercard、JCBなど主要ブランドに対応した決済が利用可能です。
サードパーティ製決済ゲートウェイを利用する
Shopifyでは、Shopify Payments以外の決済ゲートウェイも利用可能です。
一部のサードパーティ製ゲートウェイ(例:Stripe、Adyenなど)は3Dセキュアに対応しており、これらを利用することで3Dセキュアを有効にできます。
ただし、各ゲートウェイの設定や対応状況は異なるため、詳細は各プロバイダーの公式ドキュメントを参照することをおすすめします。
Shopify Plusでのカスタム決済アプリを開発する
Shopify Plusの加盟店であれば、決済拡張機能を利用してカスタム決済アプリを開発し、3Dセキュアを組み込むことも可能です。これにより、特定のビジネス要件に合わせた決済処理を実装できます。
ただし、開発には高度な技術的知識とShopifyの承認が必要です。
アプリでは導入できない
Shopify App Storeには、決済やセキュリティ関連のアプリが数多くありますが、3Dセキュア自体を導入・制御する専用アプリは存在しません。なぜなら、3Dセキュアは決済プロバイダー側(Shopify PaymentsやStripeなど)で実装・提供されるセキュリティ機能であり、Shopifyアプリから直接制御したり、追加で導入したりできない仕組みであるためです。
Shopifyで3Dセキュアを利用するときの注意点
Shopifyで3Dセキュアを利用するときの注意点は、次のとおりです。
- すべての取引で認証が行われるわけではない
- 購入者側のカードが非対応だと認証されない
- 一部ユーザーが購入を途中でやめる可能性がある
すべての取引で認証が行われるわけではない
Shopify Paymentsでは3Dセキュア2.0が自動的に適用されますが、すべての取引に対して必ず認証が実行されるわけではありません。
3Dセキュア2.0は「リスクベース認証」に対応しており、取引内容が安全と判断された場合は追加認証を省略することがあります。ユーザー体験の向上という利点はありますが、「3Dセキュアを導入していれば100%安全」というわけではない点に注意が必要です。
購入者側のカードが非対応だと認証されない
3Dセキュアはカード発行会社が対応していなければ機能しません。購入者が使用するクレジットカードが3Dセキュア未対応、または事前登録がされていない場合、認証は実行されずにそのまま決済が完了します。
この場合、万が一不正利用が発生しても、店舗側がチャージバックのリスクを負うことになるため、3Dセキュアの効果を十分に発揮するためには、顧客のカード対応状況も影響する点を理解しておく必要があります。
一部ユーザーが購入を途中でやめる可能性がある
3Dセキュアはセキュリティを高める一方で、購入時に追加の認証操作が発生するため、慣れていないユーザーや高齢層などにとってはハードルになる可能性もあります。「いつもと違う画面が出て不安になった」「操作がわからなかった」といった理由で購入をやめてしまう、いわゆる「カゴ落ち」が起こることも珍しくありません。
導入する際は、ユーザーにとって違和感の少ない決済フローになっているかどうかを確認することが大切です。
3Dセキュア導入後に起きたトラブルとその対処法
3Dセキュア導入後に起きたトラブルとその対処法は、次のとおりです。
- 認証画面が表示されない
- 認証に失敗して決済できない
- 認証後に注文が作成されない
- チャージバックが発生する
認証画面が表示されない
3Dセキュアを導入しても、購入者に認証画面が表示されないことがあります。これは、3Dセキュア2.0の「リスクベース認証」により、リスクが低い取引だと判断された場合、追加認証をスキップする仕様によるものです。
また、購入者のカードが3Dセキュアに未対応の場合も、認証は行われません。セキュリティ的に問題がなければ対応不要ですが、念のため注文詳細画面で認証状況を確認しておくと良いでしょう。
認証に失敗して決済できない
ワンタイムパスワードの入力ミスや指紋・顔認証の失敗、通信環境の不具合などにより、3Dセキュアの認証がうまくいかず、購入者が決済を完了できない場合があります。このようなトラブルは一時的なものであることが多く、再度試してもらうことで解消されるケースが大半です。
必要に応じて、他の支払い方法を案内したり、FAQページに対処方法を記載したりしておきましょう。
認証後に注文が作成されない
まれに、3Dセキュア認証や決済が完了しているにもかかわらず、注文がShopify上で作成されないことがあります。これはネットワークエラーやブラウザーの問題などで、注文処理が途中で止まってしまうことが原因であることが多いです。
管理画面の決済ステータスを確認して支払いが完了していれば、手動で注文を作成することもできますので、購入者には状況を説明し、必要に応じて返金や再注文の案内を行いましょう。
チャージバックが発生する
3Dセキュアを導入していても、チャージバック(カード会社による支払い取消)が発生する可能性はゼロではありません。たとえば、認証が行われていない場合や、正規の購入者が「身に覚えがない」と申し立てた場合などです。
トラブル発生時は、注文詳細画面で3Dセキュアの認証有無を確認し、必要に応じて決済サービスやShopifyサポートに異議申し立てを行いましょう。
3Dセキュアに関するQ&A
最後に、3Dセキュアに関するよくある質問とその回答を紹介します。
3Dセキュアの認証状況はどこで確認できる?
認証の有無は、Shopify管理画面の「注文詳細ページ」から確認できます。支払い情報のセクションに、3Dセキュア認証が実施されたかどうかが表示されるため、不正利用が疑われる場合やチャージバック対応時の証拠としても活用可能です。
安全性を高めるためには、定期的なチェックを推奨します。
3Dセキュアを無効にできる?
Shopify Paymentsを利用している場合、3Dセキュアはセキュリティ機能として標準で組み込まれており、任意で無効化できません。不正利用の防止や顧客保護の観点からも重要な仕組みであり、すべての店舗で自動的に適応される仕組みです。
3Dセキュアの設定変更はできる?
Shopify Paymentsでは、上述したように3Dセキュアは自動的に適用されるため、店舗側が認証の有無や条件を手動で変更できません。より柔軟な制御を行いたい場合は、Shopify Plusを利用し、カスタム決済アプリの開発が必要です。
3Dセキュアによる取引失敗はある?
購入者がパスワードの入力ミスや生体認証に失敗した場合、決済は完了せず注文も成立しません。こうしたケースは一時的なトラブルであることが多く、多くの場合は再試行により正常に決済が完了します。
まとめ
Shopifyでの3Dセキュア導入は、オンラインショップにとって不正利用のリスクを軽減し、購入者に安心感を与える重要なセキュリティ対策です。
ただし、すべての取引で必ず認証が行われるわけではなく、場合によってはトラブルが発生することもあります。そうした場面にも冷静に対応できるよう、認証状況の確認方法や想定されるリスクへの備えも理解しておくことが大切です。セキュリティとユーザー体験のバランスを取りながら、安全で信頼されるショップ運営を目指しましょう。
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