ShopifyでNFTを販売する方法

2021年頃から、「NFT」ということばが注目を集めるようになりました。NFTということばが広く知られるようになったきっかけは、デジタルアート作家の「Beeple」ことマイク・ウィルケンマン氏のデジタルアート作品「Everydays – The First 5000 Days」が日本円で約75億円で落札されたというニュースがきっかけといっても過言ではありません。

このニュースをもとに、デジタルアート作品がNFTとよばれる新たなタイプのデジタル資産であることや、ブロックチェーン技術が使われていることを理解した人も多いのではないでしょうか?

今回は、Shopify(ショッピファイ)でNFTを販売する方法について解説します。

NFTについておさらい

NFTやブロックチェーンは、Web3.0を表すことばとして使われています。Web3.0は令和4年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)の中で次のように述べられています。

次世代インターネットとして注目される概念。巨大なプラットフォーマーの支配を脱し、分散化されて個と個がつながった世界。電子メールとウェブサイトを中心としたWeb1.0、スマートフォンとSNSに特徴付けられるWeb2.0に続くもの。

引用元: 令和4年6月7日閣議決定 | 経済財政運営と改革の基本方針2022 について17ページ

経済財政運営と改革の基本方針2022のなかには、多様化・地域活性化の推進の一環として、多様化された仮想空間の実現を目指し、「Web3.0、NFT、メタバースなど分散型のデジタル社会の実現に向けて必要な環境整備」と述べられています。

経済財政運営と改革の基本方針2022

Web3.0という概念では、NFTという言葉の他にも、仮想通貨やブロックチェーンといった言葉を聞く機会も増えています。NFTと仮想通貨とブロックチェーンについて解説します。

NFTとは

NFTはNon-Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)の略称で、代替不可能なデジタル資産という意味です。ファンジブルは代替可能という意味です。ノン・ファンジブルは代替不可能で唯一無二という意味になります。

トークンは代用貨幣や引換券という意味を持ち、NFTではデジタル資産という意味で使われています。ブロックチェーン技術が使われており、NFTに固有の識別サインを設定し、唯一無二のデジタル資産であることを証明することが可能です。

1点ものなのでデジタルアート作品や、コンサートチケット、不動産契約やゲームのアイテムなど同じ商品が1つしかないものに使われています。

仮想通貨とは?

仮想通貨とはNFTと同様にブロックチェーン技術が使われている、電子データでやり取りされる通貨です。法令上では暗号資産と名称で統一されています。仮想通貨の定義は次のとおりです。

  • 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
  • 電子的に記録され、移転できる
  • 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

引用:日本銀行Webページ

電子マネーやプリペイドカードと混同してしまいそうになりますが、電子マネーは法定通貨であるため、法定通貨ではない仮想通貨とは異なります。

仮想通貨は銀行などを経由せずに、交換所や取引所といった暗号資産交換業者から入手や換金手続きが可能です。金融庁と財務局に登録し認定された事業者が換金や発行ができます。

仮想通貨でよく知られているのは、ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)です。イーサリアムはNFTの購入にも使われています。仮想通貨は通貨と同様の意味を持つため、代替可能なファンジブル・トークンです。1ビットコインは誰が所有しても、誰と交換しても1ビットコインなので代替可能といえます。

ブロックチェーンとは

一般社団法人全国銀行協会は、ブロックチェーンを次のように定義しています。

ブロックチェーンとは、一般に、「取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術」とされています。データの破壊・改ざんが極めて困難なこと、障害によって停止する可能性が低いシステムが容易に実現可能等の特徴を持つことから、銀行業務・システムに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

引用:一般社団法人全国銀行協会 ブロックチェーンって何?

取引履歴は暗号技術を使ってブロック毎に1本の鎖のようにつながって記録されているのが特徴です。それぞれのブロックには合意した取引内容と、複数のブロックを繋げるために前のブロックの取引や合意情報と連結して構成されます。

ブロックは複数が連結して組み立てられているので、改ざんや破壊は困難です。ブロックが鎖のようにつながり、1つのブロックには合意した取引履歴が含まれているので、ブロックチェーンと呼ばれています。1ヶ所で管理するのではなく、複数のユーザーが信用を付加していく分散型台帳という特色をもつため、民主的なデータ管理といえるでしょう。

Shopify(ショッピファイ)でNFTを販売可能な条件

NFTはブロックチェーン技術を用いた代替不可能なデジタル資産です。ShopifyでNFTを販売するにはどのような条件をクリアすれば良いのでしょうか?

ShopifyでNFTを販売するには、いくつか条件が課せられます。

ShopifyでNFTを販売する条件
  • Shopifyの非代替性トークンBetaプログラムに参加する
  • Shopify Plusを利用している
  • 現時点ではアメリカのECサイトのみ
  • クレジットカード決済システムを使用する
  • 仮想通貨の購入ができる代替決済方法を選択する

Shopifyの非代替性トークンBetaプログラムの参加についてと、Shopify Plusの利用の2つの項目について最初に説明します。その他3つの項目は、ShopifyでNFTを販売するための手順で解説しますので参考にしてください。

Shopifyの非代替性トークンBetaプログラムに参加する

ShopifyでNFTを販売するには、非代替性トークンBetaプログラムに参加する必要があります。

非代替性トークンBetaプログラム

画像引用元:非代替性トークンBetaプログラム

ECストアがアメリカに拠点があり、Shopify Plusプランを利用しているという条件を満たしていたら、トークンゲートコマースのページにてNFTを販売できる条件を満たしているかを確認しましょう。

条件を満たしているかを確認するには、非代替性トークン発行アプリの提供先に確認してください。アプリの提供先は、Shopifyヘルプセンターのブロックチェーンアプリパートナーのページに提供先が記載されています。

Shopify Plusを利用している

ShopifyでNFTを販売する条件は、Shopify Plusを利用していることです。Shopify Plusは月額利用額が2,000ドルから利用可能なShopifyの上位プランです。ECサイトの規模により利用額は変動しますが、最低価格は2,000ドルから利用できます。

Shopifyプランの月額費用

Lite Basic Standard Premium Plus
月額費用 $9 $29 $79 $299 $2,000

Shopify(ショッピファイ)でNFTを販売するための手順

Shopify(ショッピファイ)でNFTを販売するためには、いくつかの手順に沿って手続きを行う必要があります。

日本国内でのNFT販売は最近アプリの提供が開始されていますが、こちらでは基本的な手順を解説していきます。日本国内でNFTを販売できるアプリについては後述します。

ShopifyでNFTを販売するための手順
  • アメリカ拠点のECサイトを準備する
  • Shopify Plusを申し込みする
  • Shopify内のNFTベータプログラムに参加申請をする
  • クレジットカード決済のサービスを選択する
  • 仮想通貨の購入ができる代替決済方法を選択する
  • NFT作品を作成し販売する

アメリカ拠点のECサイトを準備する

ShopifyのNFT販売は現時点ではまだβ版であるため、一部の国しかサービスが利用できない状況です。日本も同様に対応していないため、NFT販売に対応している国を拠点としたECストアを用意する必要があります。

サービスが適用されている国でアメリカを拠点にしてECストアを準備します。ECサイト設立にあたってアメリカで法人を設立する場合は、日本貿易振興機構(JETRO)のページに、会社設立手続きに必要な書類の説明が掲載されているので、参照してみてください。

参照:JETRO(日本貿易振興機構ジェトロ) | 外国企業の会社設立手続き・必要書類

Shopify Plusを申し込みする

アメリカ拠点のECサイトを準備したあとは、Shopify Plus利用の申し込み手続きを行います。Shopify Plusの公式サイトより、「Start upgrading in minutes. It’s time to grow」というボタンをクリックしてアップグレードしましょう。

Shopify内のNFTベータプログラムに参加申請をする

Shopify Plusに加入したあとは、NFT販売に向けて準備をすすめます。

Shopify内のNFTベータプログラムに参加申請をする

Shopify NFTベータプログラムの申し込み画面より、Apply Nowのボタンをクリックして、リクエストフォームに記載して送信します。申請が正式に受理されるとNFT作品の販売が可能です。

クレジットカード決済のサービスを選択する

ShopifyのNFTベータプログラムの申請が完了し受理された後は、クレジットカード決済サービスを選択します。ShopifyにはShopifyペイメントというサービスがありますので活用しましょう。Shopifyペイメントの設定は管理画面の設定から行います。

Shopifyペイメント

管理画面にログインし左下の設定>決済をクリックして、Shopify payments「アカウントの設定を完了する」をクリックします。

Shopifyペイメントの有効化が完了すると、クレジットカード決済やApple PayやGoogle Payといった多くの決済方法を受け付ける設定になっています。通貨は別々に設定可能です。

仮想通貨の購入ができる代替決済方法を選択する

Shopifyペイメントの設定が終了したら、続いて仮想通貨で購入するための代替決済方法の設定を行います。

代替決済方法の設定
  1. 管理画面の設定から決済に移動する
  2. 追加の決済方法のセクションで決済方法を追加をクリックする
  3. 仮想通貨(暗号資産)の決済方法を1つ以上選択する
  4. 決済方法を有効化する

Shopifyで仮想通貨を受け付けるための決済方法として選択可能なサービスは次のとおりです。

crypto.com 20種類以上の暗号通貨 (ビットコイン、Ethereum、Dogecoinなど) を受け付けることができます。
Coinbase Commerce さまざまな暗号通貨を受け付けることができます。また、Coinbaseを利用すると、法定通貨への両替取引も簡単に行えます。
BitPay 米ドルで決済された14種類の暗号通貨 (ビットコイン、ビットコインライトニング、Ethereum、Dogecoinなど) を受け付けることができます。
DePay 分散型取引所で流動性のある、Ethereum、バイナンススマートチェーン、Polygonの暗号資産を受け付けることができます。
OpenNode ビットコインや法定通貨で決済されたビットコインとビットコインライトニングを受け付けることができます。
Strike 米ドルで決済されたBitcoin Lightningを受け取ることができます。

クリプトやコインベースのような暗号通貨に対応する決済方法を有効にすると、決済ゲートウェイサービスで利用できる暗号通貨を受付できるようになります。

NFT作品を作成し販売する

代替決済の設定が完了したら、いよいよNFTを作成しECサイトで販売を開始します。販売するNFTのコンセプトや商品にあわせて、ECサイトを制作しましょう。

ShopifyアプリストアでNFTを販売できるアプリ

Shopify(ショッピファイ)でNFTを販売する手順について説明しました。従来まではShopifyでNFTを販売するには、NFTの販売に対応している国のECサイトを作成しなくてはなりませんでした。

しかし最近ではNFTを販売できるアプリの登場により、Shopify Plusを利用しているという条件はあるもののShopify上でNFTを販売できるようになりました。ShopifyでNFTを販売可能にするために提供されているアプリを2つ紹介します。

Vivid Labs

Vivid Labs

画像引用元:Vivid Labs

NFT発行プラットフォームのVivid Labsは、ShopifyでNFTの作成および販売可能なアプリをリリースしています。Shopifyのアプリストアから、入手できるようになりました。

Shopify Plusを利用していると、VIVID NFTアプリを利用して高度なNFTを作成、管理、販売できるようになりました。ビデオ、オーディオ、画像、3Dオブジェクトなどを1つに組み合わせてNFTの作成が可能です。一度作成したNFTでも、のちほど新しいメディア形式で更新することもできます。

NFTeapot

NFTeapot

画像引用元:NFTeapot

東京のCurvegrid株式会社があらたにShopifyでNFTを販売できるアプリ「NFTeapot」の提供を開始しています。

NFTeapotを利用するメリット
  • ブロックチェーンの知識や経験が不要
  • Shopifyのあらゆるツールやインフラを活用できる
  • クレジットカードやShopifyペイメントなど、Shopifyの標準的な支払い方法でNFTを購入可能
  • ブランドの一貫したイメージと顧客体験を管理できる

Shopify Plusを利用しているという条件で、NFTeapotを導入すればロックチェーンの知識や経験がなくとも、NFTの作成から販売までのワークフローを管理できるようになります。

まとめ

Shopify(ショッピファイ)でNFTを販売できるメリットは、従来の販売方法であるOpenSeaやRaribleといったプラットフォームを経由せず、自社ECサイトで販売できることにあります。

NFTを作成し販売するには、OpenSeaなどのプラットフォームを使用する必要がありました。OpenSeaなどのプラットフォームを利用するには、売買までのハードルが高いのと、操作性が難しくブロックチェーン技術や仮想通貨の取引に慣れていないと難しいのが現状です。自社のECサイト上でNFTを販売できないため、管理も煩雑になります。

ShopifyがNFTの売買ができるプラットフォームとなれば購入時に仮想通貨を使用しなくても、クレジットカードで購入できるため広く普及することも可能になることが予想されます。現時点ではShopify Plusを利用しているECサイトに限られますが、今後さらにNFTの販売は広がっていくでしょう。

今回解説した内容を自社で実現することが難しかったり、コンサルティングが必要だったりする場合は、当メディア「Shopify Guide」を運営する株式会社NDPマーケティングまでお気軽にお問い合わせください。メディアの運営を通して、Shopifyに関するノウハウを持ち合わせています。

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